研究者の声:オピニオン



2013年9月8日更新

ポスドクはポスドク問題の解決を国に期待していても良いのか?

BioMedサーカス.comに始めて寄稿させていただきます。このような文章を書いたことがないので、読みにくい箇所が多々あるかと思いますが、ご容赦ください。

私はこれまでポスドクという職に就いたことはないのですが、所謂ポスドク問題というものに興味があり、ここ5年ほど関連書籍やこの問題を議論しているホームページをいくつも見てきました。

その理由は、今の自分のポジションは不安定(バイオ系の助教です)で、いつポスドクになるかもわからないし、もし海外に出ることになったら、その職はきっとポスドクになるのだろうと思っているからです。

ポスドク問題、特にバイオ系、は調べれば調べるほど悲しく胸がつぶれるような思いになります。ポスドクの方の生の声などが書かれたブログや掲示板を見ると、本当に辛く、また、自分がそうなるのかもしれないと思うと非常に不安な気持ちになります。

この5年ほど、この問題を追い続けてきた(と言っては偉そうですが)のですが、良い見通しを示しているものは皆無と言ってもよい状態でした(その逆はウンザリするほど目にしたのですが・・・)。

それで今回、以下のようなニュース記事を見つけたので、思い切ってポスドク問題に対する国の対応について自分の意見を文章にしてみることにしました。

まずは、そのニュース記事を紹介させていただきます。

文科省、ポスドク就職を後押しー中小に1年常駐、実践力磨く

文部科学省は2014年度から、中小企業の現場に博士研究員(ポスドク)を半年ー1年常駐させる新事業を始める。地場企業のモノづくり力向上と地元大学の ポスドクのキャリアパス拡大を通じて、就職マッチングにつなげることも狙う。機能性食品や有機エレクトロニクス、フォトニクスなどに関して、3省共同事業 として産学連携に取り組む24地域が対象。

新事業は技術開発型の地場企業のイノベーション創出に向けて、基礎研究力を活用して事業開発に踏み出そうとするポスドクの力で後押しするもの。製造現場 で地元企業とポスドクの双方が実践的な課題解決に取り組んで理解が進むことにより、雇用契約につながることを期待している。

対象は文科省と経済産業省、農林水産省が共同で手がける地域支援のうち、「地域イノベーション戦略支援プログラム」の約40案件。人件費と研究開発費などを含めてポスドク1人当たり1000万円を拠出、計50人を派遣する。


日刊工業新聞
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1520130828eaac.html

こういった取り組みは、私が記憶している限り初めてではないはずです。きちんとしたニュース・ソースは見つけられなかったのですが、以前にもポスドクを採用すれば500万円を採用した会社に支給します、という取り組みもありました。(参考:グーグル検索

ちなみに、この取り組み(500万円でポスドク採用を促す)は2009年に行われたようです。しかし、私の調査不足かもしれませんが、その後にこの取り組みが効果があったかどうかを国が評価/議論したという話は聞きません。

私はこういった取り組みを批判するつもりは全くありません。2009年の取り組みも、今回ニュースになった取り組みも、ポスドク問題を解決するためには重要な試みだと思います。

しかし、何か取り組みをしたら、その取り組みの効果がどうであったか、何か反省点はないのか、をきちんと検証しないといけないのではないでしょうか。

特に、このような前例のない試み(=実験)をした場合は、次に繋げるためにも、(1)どのくらいの企業がポスドクを採用したのか、(2)採用されたポスドクは企業が期待するような働きをしたのか、(3)採用されたポスドクは今もまだ企業にいるのか、(4)この試みで採用されたポスドク自身はどのように考えているのか、等をきちんと把握するべきではないでしょうか。

もちろん、国は既に上記のようなことは調査済みで、その結果、こういった試みは効果があると判断して今回ニュースになった取り組みをすることになったのかもしれません。

ですが、ポスドク問題の当事者であるポスドクに対しても、上記のような取り組みの結論を明らかにしてもよいのではないかと思います。そうすれば、ポスドク自身も自分の今後を考えるキッカケになるはずです。

やや穿った見方かもしれませんが、もしかしたら国はポスドク問題というのを本気で解決しようと思っていないではないでしょうか。

インターネットが一般にも普及するようになって十数年が経過し、ポスドク問題の根源的な責任が国にあることが多くの人に知れ渡ることになりました。そのため、国としては何らかの対策をしているという姿勢を見せなければいけなくなったのではないでしょうか。

ですが結局のところ、国に責任はあるとは言っても、どの個人に責任があるかは曖昧なままです。したがって、極論を言えば、ポスドク問題に関連する一連の施策(原因となった大学院重点化やポスドク一万人計画だけでなく、ポスドク問題を解消しようとする試みなども)の責任は誰も取る必要がありません。

そのため、結局のところポスドク問題はポスドクとなってしまった人が苦難を味わうだけで、その後にポスドクの数が減るまで(ポスドクが高齢化して失職するとともに、新たなポスドクのなり手がいない)問題は放置されるのではないでしょうか。

逆を言えば、国としてはポスドク問題は解決しないのではなく、放置していれば自然と解消すると思っているのかもしれません。しかし国民からの批判を避けるため、それまで(ポスドク問題が自然解消するまで)は何となくこの問題に取り組んでいますよという姿勢をとりましょうね、と国が考えていると言っても嘘ではないようにも思います。

だからこそ、国が何か取り組みをしているというニュースはあっても、その効果がどうであったかというニュースはないのではないでしょうか。(やや被害妄想的ではありますが・・・)

もちろん、このような考え方は、真面目にポスドク問題に取り組んでいる方にとっては失礼なことだと思います。ですが、結局のところ、この問題に取り組んでいる方(国のお偉いさんや、所轄の役人、大学/大学院の教授クラス)は、ポスドク問題が解決しなくても失職しませんし、ましてや給与や待遇が悪くなるということもありません(少なくとも私が調べた限り、ですが)。

となると、国が色々とポスドク問題を解消するための施策は全てが「ポーズ」であり、実効性はほとんど期待されないのではないかと思います(もちろん、そういった試みの恩恵を預かる人はいるかもしれませんが、焼け石に水と言ったところでしょう)。

では、この問題を解決できるのは誰か、という話になりますが、この言葉は使いたくないのですが、やっぱり「自己責任」ということでポスドクの職にいる人が各自で問題解決(ポスドク問題を解決するのではなく、自分自身をポスドク問題から守る)するしかないのかと思います。

私は、改めて文章で表現するのは恥ずかしいですが、サイエンスが好きです。子どものころからの夢であった研究者になれて幸せだという思いもあります。ですが、一方で、それなりの普通の生活もしたいとも思っています。

自分が優秀でないのが問題なのかもしれませんが、私のような凡人でも、サイエンスが好きな人が研究者となれるような環境があればいいなと思います。一部の飛び抜けた優秀な研究者しか普通の生活が送れないというのは少し寂しいです。

乱文・駄文で失礼いたしました。この国がサイエンス好きの人間にとって、もう少しだけ優しくなればと思って自分の考えを文章にしてみました。

執筆者:サイエンス好きの少年から研究者になった凡人

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