研究者の声:オピニオン



2013年10月12日更新

アメリカでも思ってることはストレートに言わないよ

チラ裏なオピニオンですが、ここBioMedサーカス.comで執筆する機会を得たので、アメリカの研究業界に関して自分が思ってることを書いてみます。

私はアメリカに来て5年目のポスドクです。日本の知人友人からは、今の日本は閉塞感(足の引っ張り合い?)が漂っているからアメリカみたいな「サイエンスに対しては上下関係はない」みたいな環境は羨ましいなと言われます。どうやら、「アメリカ人は日本人と違って思っていることをストレートに言う」と皆さん信じているようですが、実際にはそうでもないです。むしろ本音は言わないんじゃないでしょうか(研究業界のことしか知りませんが)。

アメリカの研究室のボスも、ポスドクに対して本音を言っていないことは当然あります。めちゃくちゃいい人のように見えていて、実はポスドクを使い捨ての道具のようにしか思っていないボスは多いです。実際彼らも、ポスドク1人1人の人生について考慮していては自分自身が生き残れないから仕方ないと思います。昨今の研究業界の厳しさを考慮に入れて考えてみると、ボスが自分自身の成功を犠牲にしてまでポスドクの将来を考えてくれることはまずないでしょう。

最近ではボス(ラボを主宰する立場)になっても、コンスタントにハイジャーナルに論文を出さなくては生き残れないです。でも、ハイジャーナルに論文を出すためには、複数のポスドクが共同で働かなくてはならないことが多いです。そうなると、いざ論文を出すときに著者順をどうするかで揉めます。ポスドクにとって、ハイジャーナルの筆頭著者論文があるかどうかは死活問題だからです。

ボスは、そんなこと(=著者順で揉めること)は初めからわかっていても、敢えて問題から目をそらして(問題に気づかせないようにして?)ポスドクに実験をさせます。そして、いざ問題が表面化すると、良い人ぶりながら「じゃあ君たちで話し合って決めるのがいいんじゃないかな」などと言ったりします。それか、今後も自分にとって便利な人を筆頭著者にしてあげたりします。結局、ボスにとっては、各ポスドクの人生なんてどうでもいいのです。

多くのボスは、普段はポスドクに「君のキャリアを考えるとこれこれするのがいいと思うんだ」とか調子のいいことを言いいます。しかし、そのようにして勧めてくる事柄は、最終的には自分にとって得することしかありません。たまたまWIN-WINの関係であれば良いのですが、そうなることはあんまりないように思います。結局ボスにとっては、自分のラボからハイジャーナルに論文が出れば、その後ポスドクがどうなろうが知ったことではないのです。

もっと言えば、ハイジャーナルだけを狙って結局いい結果が出なかった場合のポスドクのことは全く興味がありません。そのため各ポスドクに「保険として中ぐらいのプロジェクトをやらせてあげる」ということは稀です。ましてや、フェローシップなんかを書かせてあげる機会を与えることなどもありません(お金がなくて給料が払えず、でもそのポスドクに残ってもらいたいときは別のようですが)。

でも、そういうときでも(フェローシップを書くことを反対するとき)、「今の君はフェローシップを書くことに時間を割くより、今の君のinnovativeなプロジェクトに専念した方が将来のためになるよ(良い人そうに笑顔で熱心に力強く)」などと言ってきます。その結果としてポスドクは、「自分の将来を人質に取られたテクニシャン」として都合良く馬車馬のように働くことになります。

ある意味、これらのことは当たり前の常識なのですが、アメリカに来たばかりの人は、そのような状況に気づけないようです。そのため、2~3年で帰国した人の多くは、そういうドロドロした部分が見えないままのようで、「アメリカはいつも本音」とか「アメリカは実力社会」とか「アメリカでは教授も学生もポスドクも科学者としてはみんな対等」とか帰国後に得意気に語るようです。でも、そういうのを鵜呑みにしない方がいいです。

以上、愚痴のようですが、アメリカの研究業界もそんなにクリーンではないですよ、ってお伝えしたかっただけです。こんな文章ですが、読んでる皆様にとって何らかのお役に立てればなぁと思います。それにしても世知辛い世の中ですね。。。

執筆者:独立準備中@アメリカ西海岸

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.