研究者の声:オピニオン



2013年10月25日更新

順調アピールを真に受けてはいけないよ

先日、こちらのオピニオンのコーナーに寄稿したものです。
アメリカでも思ってることはストレートに言わないよ(2013年10月12日更新)

前回の文章を書いた後で、他にも言いたいことが出てきてしまったので、BioMedサーカス.comの編集部の方にお願いして「追記」という形でもう一つ記事を書かせていただくことになりました。題材は「周りの人の順調アピール」についてです。

世の中には、実際にはうまくいっていなくても、とにかく他人に対して「自分は成功している!」とアピールしたい人が非常に多いことに最近気づきました。私はこれまで、そういう順調アピールを真に受けて自分の境遇を嘆いて落ち込んだりしてました。でも、実際にはそんな恵まれた環境なんてどこにもないです(そうですよね??)。

そこで、良くない境遇においても精一杯努力しなさいという自戒をこめて、順調アピールの典型例をリスト化してみました。

(*注:筆者は今アメリカにいて、在米中に順調アピールを真に受けてプチ鬱になってたりしました。その関係から、以下の順調アピールの例は、アメリカ独特の内容も含まれていたりします。予めご了承お願いします。。。)


例その1:「職があるので来ませんかと言われたが断った」
嘘とは断定できないが、その人が何年も(例えば2年以上とか)職探しを続けているとしたら発言内容はかなり怪しい。「職があるので・・・」と誘われるような人ならば、職探しに何年もかける必要はないはず。そもそも、この発言の全ては自己申告で、発言の裏を取ることは他人には出来ない。

例その2:「職探しをしてはいるが、それほど真剣にやっていないので今のところ見つかっていない」
それほど真剣にやっていないので、の部分は単なる自己申告。既にもう長い間就職活動をしているとしたら、たぶん実力がなくて職が見つからないだけ。この発言の中で事実なのは「職探しをしているが今のところ見つかっていない」という部分だけである。

例その3:「自分は論文数がまだ10報には届かない」
これを言った人が実は1報しか論文を出したことがなかったという例が実際にあった。かなり意図的なミスリーディング。正直驚いてしまって、その人との交友関係を続けるか微妙に悩んだ。

例その4:「グリーンカードを取るのにこんなに時間がかかるなら、夫に頼らず自分でやればよかった」
その人の職種だと自分で申請したら5年ぐらいかかる。しかも、申請するためにはまずグリーンカード申請をスポンサーしてくれる雇用主を見つけなければならないわけだから至難の業。旦那さんが申請するときに一緒にやってもらったからまだ何とか取れたのに、まるで「自分で取れば簡単だったしもっと早かった」と言わんばかりのこの発言。グリーンカードの申請の手続きを良く知らない人たちに対して、自分は優秀だからグリーンカードくらいは簡単に取れる、と言う感じで自慢(?)していたようだが、その自慢が「発言内容を嘘だと見抜ける人」にまで伝わってしまうのは少し恥ずかしい。

例その5:「同業の別の職場から引き抜かれた」
でもなぜか職位は前と同じ。それは引き抜きとは言わないのでは?実際はコネを使っての単なる転職だった模様。

例その6:「知り合いはみんな職位の高い人ばかり」
暗に自分もそういう職位の高い人たちと同等だと言いたかったようだが、じゃあなぜ今あなたの職はそんなに低いんですか?という疑問。そもそも、そう言う職位の高い人たちと本当に「知り合い」と言える仲なのかも怪しい。あくまで自己申告だし。実際は、そういう「偉い人」とは単に学会で1回きり話しただけで相手はもう覚えてなかったりして。

例その7:「書かないといけない論文がたまっている」
最初の頃は自分は論文を書くだけのデータがないと落ち込んだのだが、最後の方は「じゃあ書けばいいんじゃない?」と心の中で何度もツッコミを入れていた。論文はpublishして初めて意味があると思う。投稿しただけではまだ不十分なのに、投稿してないどころか書いてもいないのはそもそも何もしていないのと同じではないだろうか。しかも、本当に論文を書くだけのデータがあるのかどうかも怪しい。


というわけで、基本的に信用できるのは「事実」のみであって、本人の自己申告は疑わしいことが多いです。

「順調アピールの典型例」というより「私が騙された発言例」になってしまいましたが、こういう順調アピールを真に受けて、それと自分を比較して、自分の置かれた状況を必要以上に悲観しなくてもよいと思います(過去の自分へのアドバイス?)。

執筆者:独立準備中@アメリカ西海岸

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