海外ラボリポート



林正道 博士 〜University College Londonから(2011年06月01日更新)

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私は大学院博士課程在籍中の最終年次 (2010年5月) に英国に渡り、University College London (UCL) のInstitute of Cognitive Neuroscience (ICN)にて10ヶ月間の研究生活を送りました。英国での留学を終えた今、感じている事を一言で言うとすれば、「もっと早くから行けば良かった」。想像以上の研究環境に、まさに後ろ髪をひかれる思いで帰国しました。

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私が取り組んでいる研究テーマは、時間認知に関連する脳内処理機構の解明です。我々の日常生活では、会話の「間を読む」、信号が変わる「タイミングを見計らう」など、多くの場面で時間を意識しながら生活しています。このように時間認知は基本的かつ重要な機能であるにも関わらず、ヒトの脳がどのように時間を処理しているかということについてはよく分かっていませんでした。今回の留学で、私は時間認知の脳内処理機構の解明に繋がるある仮説を、経頭蓋磁気刺激(TMS)法という手法を用いて検証しようと考えていました。

lab report #01-1

私がICNのWalsh教授の研究室を留学先として選択したのは、三つの理由がありました。一つは検証しようとしていた仮説が彼の提唱した理論に基づくものであったこと、二つ目は彼がTMS法に精通した研究者であったこと、三つ目は彼の研究室を含めUCLが認知神経科学の分野で非常に高い生産性を実現できている理由を知りたかったということでした。また、研究でも生活でも英語の使用が必須になる環境へ身を置くことによって、英語のスキル全般をいち早く向上させたいというのが留学の大きな動機でもありました。

しかしながら実際に留学をしようと思ったときにネックになるのが、資金の問題です。私は日本学術振興会から特別研究員としての助成を受けていましたが、実際にロンドンでの生活費を賄うことはかなり厳しいということが分かり、在学中の留学をあきらめかけていました。しかし幸運なことに、若手研究者を対象にした「優秀若手研究者海外派遣事業」の募集(ただし平成21年度限りで募集終了)があり、資金を援助して頂くことができました。留学先(ラボの様子や研究所の環境等)の情報は、学会に参加した際にポスターを発表していたラボの学生やポスドクから聞いていたので、迷うことなくWalsh教授にコンタクトを取り、留学が可能になりました。

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UCLはどうして高いクオリティの論文を数多く出せるのか。実際に留学して分かったのは、優秀な人材が多く施設が整備されているということに加えて「リアルタイムの意見交換」、「研究所外からの豊富なインプット」、「研究者の育成環境」があるということです。

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