海外ラボリポート



林正道 博士 〜University College Londonから(2011年06月01日更新)

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言語の違いは多くの人が留学で感じるストレスの一つでしょう。しかしながら私たちは英語をツールとして使いながら仕事をするわけですから、「英語がつかえない」というのを「研究ができない」ことのいいわけにすることはできません。その気持ちが大きなプレッシャーにもなります。会話の中で不意に入るジョークを理解するのには高い英語の運用能力が必要ですし、できればこちらもたまには気の利いた冗談も言いたいものです。相手の言葉を一度で理解できないような状況では濃いディスカッションをすることも難しくなります。

これらの点は確かに研究を進めるに当たって負担に感じることもありますが、語学以外の部分は案外一時的なものですぐに順応してしまいます。語学力を十分なレベルまで向上させることだけはさすがに短期間にという訳にはいきませんが、実際に留学することで自分がどのぐらいのレベルにいるのか、なにが弱いのかに気付くことができますし、そもそも研究者として生きて行くには絶対的に必要なスキルですから、そのストレスを受け止めてモチベーションに変えていかなければなりません。私もラボのポスドクに私が執筆した助成金の申請書や学会の要旨などをチェックしてもらう事が何度かありましたが、直されたものを受け取るたびに自分の表現力の乏しさを痛感し、歯がゆい思いをしていました。しかしながらこの様な経験を通して、ライティングの重要性を強く認識できたのは大きな収穫であったと思っています。

lab report #01-3

これらの点を振り返って今でも改めて感じることは、留学のメリットはデメリットよりも遙かに大きいと言うことです。大学院生、またはポスドクという立場であれば制約も比較的少ないでしょうし、資金的な目処さえつけば、自分が研究をする場所として最高と思える場所で研究することをためらう理由はないように思います。特に語学が研究を行う上で基礎的かつ重要なスキルであることを鑑みると、私自身はもっと早い時期から行っておけば良かったと強く感じました。

これからもし海外へ(特に短期で)研究に行かれることをお考えの方がいるとすれば、私自身の経験からは研究計画の事前準備の重要性を強調しておきたいと思います。特に私のように1年未満の滞在の場合は、これが留学の成否を決定づけると言えるのではないでしょうか。一度現地に行ってしまったら、できるだけ早い段階でホスト先の信頼と研究成果を勝ち取らなければなりません。特に英語力に100%の自信が持てない場合に、自分の研究能力を英語力の不足を超えて示せるのは、事前準備を十分にして望むことのできる最初のプレゼンだけだと思った方がよいかもしれません。

留学先では自分の研究を進めること以外に、ラボに貢献できる方法を探すと良いと思います。例えば自分が得意としていている研究手法を用いて他人の研究を積極的にサポートすることなどが一つの方法です。そのような関係が構築できれば、相手はこちらの英語力不足を負担に思うことも少なくなりますし、よい語学トレーニングの機会が生まれます。短期間の留学であってもその間に他の研究者と良好な協力関係が築くことができれば、将来的な共同研究にも繋がる貴重な財産となることでしょう。

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著者:林正道
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