海外ラボリポート



剣持信子 博士 〜米国カリフォルニア大学から(2011年06月10日更新)

海外ラボリポート(3ページ目/全3ページ)

私の活動内容は、側頭葉切除術が必要な難治性てんかんの患者さんの術前術後の認知機能の検討、また、複数のモダリティ(MEG、fMRI、DTI等)を用いて術後の機能を予測するプロジェクトの中で、fMRIのデータを集めることです。普段はオフィスでデータ分析や論文の執筆などを行っていますが、データをとるときには、スキャナのある施設に移動します。研究参加者の方とのアポイントメントや、ラボのミーティングを除けば、出勤時間等は融通が効きます。個人個人が一番効率よく働ける形式で働いて欲しいという、ボスの意向によるものです。

てんかんの患者さんを対象に認知検査を行いそのデータの解釈をする時には、これまで臨床研修で培ってきたスキルが役立っています。研究に参加してくださる患者さんは、大学病院のてんかんクリニックから紹介されてきますので、月一回、ケースカンファレンスを通じて、神経科、脳外科のドクター、レジデント達とも交流したりしています。ラボでの臨床活動とは別に、月に一回ほど、神経心理の検査を担当しています。認知機能の低下を訴える、様々な患者さんが紹介されて来ます。そこでの私の仕事は、これまでのカルテのレビュー、面接を通して、必要な認知機能検査を計画し、検査を実施、更に、採点、解釈をした上で、検査結果、解釈、治療への助言などをレポートにまとめることです。

5. 終わりに

これまでの経験を通して痛感していることは、「実力社会」と思われがちなアメリカでも「コネ」が重要であるという点です。修士課程に合格できたのは、交換留学中にお世話になった教授の推薦状のおかげでした。その教授が、修士課程のアドバイザーの教授と個人的に知り合いだったのです。修士課程から博士過程に入れたのも、修士課程のアドバイザーの強い推薦があったからですし、ポスドクのポジションを探している時には、正式な募集よりも前に、親しくしている教授から募集情報を聞いたりしました。また、現在のボスは、私がインターンをしていたフロリダの大学院出身、と、様々な縁が重なって、今のポジションに着けたと思います。留学生や外国人には、言語を始め、様々なハンディキャップがありますから、なおさら、コネが大切になってきます。仕事をこなすだけではなく、それをきちんと上司にアピールし、また、何か物事が上手く進まない時にも、積極的にアドバイスを求めるようにしてきました。現在のラボでも、オフィスにこもって仕事をしているばかりではなく、様々なミーティングに参加したり、学会で積極的に外部の人々と触れ合ったり、学内の他の研究者と交流したりすることを強く薦められています。

研究者として外国で(特に米国で)生活して行くには、研究そのものを遂行する能力だけでなく、人と交流して関係を発展させていく力、計画的に物事を進める力、問題解決を自分でする力が必要であるように思います。私は日本のラボで研究をしたことがないので日米の比較はできませんし、将来日本に帰ることが必須だとは考えていないので、最終的に日本に帰りたい人にとって留学が有利か不利かについては言及できません。ただ、自分には、自由な雰囲気の米国があっているような気がしますし、著名な研究者たちと同じ所で働けるのはとても刺激的で、自分の未熟さを思い知らされながらも、楽しく毎日を過ごしています。

 このレポートが、海外に出てちょっと冒険をしてみたい、様々なものを見てみたい、と思われている皆さんへの、後押しになれば、幸いです。何かご質問がありましたら、nobuko.kemmotsu@gmail.comまで、ご連絡ください。

前のページへ

著者:剣持信子(nobuko.kemmotsu@gmail.com)

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.