海外ラボリポート
Tweet町山和代 博士 〜英国ロンドン大学から(2012年01月20日更新)
英国の博士課程に在籍して(1ページ目/全4ページ)
私は2005年より1年半ボストン大学公衆衛生大学院の修士課程に在籍し、現在は研究者の卵としてロンドン大学衛生熱帯病医学校(LSHTM:London School of Hygiene & Tropical Medicine)人口学センターの博士課程に在籍しています。ボストンとロンドン、取得をめざす学位も違いますし専攻分野もより社会科学系に変わったので簡単な比較はできませんが、米国の博士課程と比べながら、英国の博士課程について私の所感と経験を書いてみたいと思います。
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「Research Degree Student」
これが、私たちの肩書きで、アメリカの博士課程との大きな違いを表していると思います。英国の大学院課程は、基本的に「Taught Degree」と「Research Degree」の二つに分かれており、毎学期様々なクラス(ここではモジュールと呼ばれる)に出席するMSc、MAなどのプログラムは前者に含まれます。一方、後者のResearch Degreeプログラムでは、主体性を持って単独の研究に集中するMPhil、PhD、その他の博士課程を含み、多くのPhD、Doctoralプログラムはこちらになります。そのため、こちらでは博士課程入学直後から博士論文のための研究を始めます。学位取得に必要なものは、この博士論文(dissertationではなくthesis)一本と口頭試問(defense ではなくviva)のみです。後述しますが、ご存知のとおりアメリカの博士課程よりも短い4−5年前後で多くの学生が学位を取得します。ですから、米国の博士課程はある分野を包括的に理解し教える能力のある研究者が育成されるのに対し、英国の博士課程は自分が選んだ研究テーマに特化した研究者になるというイメージがあります。