海外ラボリポート



町山和代 博士 〜英国ロンドン大学から(2012年01月20日更新)

英国の博士課程に在籍して(2ページ目/全4ページ)

1.博士課程のシステム

まず、大学への応募方法から違いました。米国の大学は、既定の応募用紙、エッセイ、TOFELとGREのスコアを提出する大学が多いかと思いますが、LSHTMの場合は英語のスコア、既定の応募用紙、エッセイに加えて、先行研究・目的・方法論を含めた簡単な研究計画書を提出しました。アメリカよりも研究テーマへの知識や経験が重要視されるようです。私は出願時より研究地域のアフリカに近いLSHTMを希望はしていましたが、出願した米国の大学2校に落ちてしまったので、いずれにしても選択肢はなく、2007年にロンドンにやってきました。

コースワークが無いといっても、一年目に方法論のクラスが必須のプログラムもありますし、自分の研究に必要な知識や方法論を学ぶために、修士の学生と共にコースを適宜取ることができます。その他、大学内やロンドン大学群内で行われるTransferable Skills Programmeというプレゼンテーションスキルや学術論文の書き方などの一般的なスキルを学ぶコースも必要に応じて受講します。

前述したように、英国の博士課程は研究中心ですので、指導教官の選択はアメリカ以上に重要だと思います。指導教官の研究分野での知識・業績、アクセスのしやすさ、人柄の3つは各学生の博士課程全体の質を決めるといっても過言ではないでしょう。私の場合は、2人の指導教官がこの3つを十二分に満たしているため、とても恵まれた環境にいます。

指導教官とは大体2週間から1ヵ月に一度のペースで会い、研究の進捗状況をレポートしたり、書き上げた論文の章についてコメントをもらったりします。必要に応じて、学内外のAdvisory Committeeのメンバーからもコメントやアドバイスを仰ぎます。

研究そのものがそうですが、英国のシステムはコースワークなどの訓練の方法ががっちりと体系化されているわけではないので、生徒の自発性、自律性が高度に求められます。ボストン時代の先生の言葉を借りると、アメリカに比べて「学生に責任を期待しすぎているシステム」とも言えるかもしれません。

すべてのResearch Degree Studentは、入学時MPhilの学生として登録し、一年目終了時にUpgradingという試験を通って博士候補生となります。研究の進捗状況、研究の実行可能性及びレベルが評価され、これにパスするとMPhilから博士候補生にupgradeし、フィールドワークや実験研究などを本格的に開始することができます。Upgradingの方法は大学により様々ですが、基本的には先行研究、概念的フレームワーク、方法論を含んだ研究計画書を作成し、それを学内でプレゼンテーションした後、学内の試験官及びAdvisory Committee のメンバーに審査が審査します。Upgradeした後、多くの学生が2年目にデータ収集、3、4年目に論文執筆をします。

授業料は、大学や専攻によりますがEU外出身の留学生はおおよそ年間10,000ポンド前後です。フィールドワークに行く間は授業料が1000ポンド以下に抑えられるというシステムを維持している大学もあります。研究費用も、奨学金に含まれていたり最初からプロジェクトに入らない限りは、基本的に自分自身で外部から持ってくる必要があります。

大半の学生は、なんらかの方法で出身国政府などから奨学金を持ってきており、アメリカのようにティーチング・アシスタントをすることによって授業料が免除されるケースは少ないです。もちろんティーチングをする機会はありますが、LSHTMは修士の学生だけなので、多くの学生は授業の補佐をする程度です。逆にいうとその分自分の研究に集中できます。研究員として働きながら、低い授業料を払いパートタイムで博士をとるいわゆるStaff PhDもいます。また、パートタイムで別の仕事をしている学生もいます。学生ビザを持つフルタイムの留学生は学内外で20時間まで働けますが、授業料と生活費両方をそこから賄うのは難しいかと思います。生活費は、各人の生活スタイルによって違うので比較は難しいですが、英国政府のResearch Councilから奨学金を得ている英国の学生は、2008/9年時点で年間12,940ポンド、ロンドン在住者は更に2000ポンド受給されているというと大体想像がつくでしょうか。

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