海外ラボリポート



中川草 博士 〜米国ハーバード大学から(2012年03月12日更新)

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米国ハーバード大学 進化生物学科 (Organismic and Evolutionary Biology) のDaniel L. Hartl研究室に客員研究員として長期滞在中です。専門は比較ゲノム進化学や情報生物学などです。2011年9月に異動し、この原稿を書いている現在(2012年2月末)でおよそ半年が経過しました。アメリカ生活にもだいぶ慣れ、研究もようやく軌道に乗り始めたところですが、そんな留学したての若輩研究者が経験したことをつらつらと記してみたいと思います。

■留学先を決めるまで
 私にはもともと海外で研究生活してみたいという希望がありました。諸先輩方の留学経験談を様々な機会で聞いたことや、藤原正彦の「若き数学者のアメリカ」を読んだことなどが影響していると思います。私の研究する分野をはじめ、多くの科学研究の中心地であるアメリカ、特にその中でもトップクラスの場所で研究したいと思い、現在所属している研究室を選びました。Hartl教授(研究室ではDanとfirst nameで呼びます)とは元々面識があり、留学をお願いすると快く受け入れてくださり、現在に至ります。


研究室のある通称BioLab
左翼の二階部分が私の所属する研究室


留学先の研究室を選ぶ際のアドバイスをするならば、その研究室が出している論文等が単に面白かったということや、良いジャーナルにたくさん出しているからなどといった理由のみで決めるべきではない、ということです。これは私のメンターである五條堀孝先生(国立遺伝学研究所 教授)から諭されたことでもあるのですが、その研究者の人柄、そして研究や教育方針、加えて出身者が現在どのように活躍しているか、また、近隣の研究機関を含めて興味深い研究者がいるのかなど、総合的に考えるべきであると思います。しかし、最終的には自分で研究費(人件費を含む)を持っているかどうかで選択の幅は変わりますし、また個人の価値観により左右される部分が大きいところでしょう。ただ、留学は自分の研究人生を決定づける大きな要素の一つとなるので、留学先を決めるにあたっては、留学経験のある諸先輩方にできるだけ相談してみるとよいと思います。いまはtwitterやFacebook等もあるので、話をぜひ聞いてみたい人が友人の友人くらいに見つかることも多いと思います。特に研究室の雰囲気や街の生活環境など、論文や研究室のホームページなどからは窺い知れない情報を事前に知っておくのは非常に重要です。

また、「どこでもいいから留学すればよい」、という訳ではないと思います。ただ自分のやりたい研究を進めるだけであれば、留学はむしろマイナス要素のほうが多いでしょう。ふと思いつくだけでも、visaや銀行口座開設のための書類作業、日本生活の一時中断、また留学先での研究や生活のスタートアップに大きな時間をとられます。また、それらにともなう経済的負担も大きいです。また、日本での就職先を探す際にも、海外からは比較的負担が大きくなります。

 しかし、私はそれらの犠牲を払ってでも、現在の研究をより発展させ、新しい出逢いを通して将来の研究により大きな可能性を広げたいと思い、留学を決意しました。

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