海外ラボリポート



中川草 博士 〜米国ハーバード大学から(2012年03月12日更新)

海外ラボリポート(2ページ目/全4ページ)

■現在の研究生活
研究室にはHartl教授を筆頭に3名のラボスタッフ、7名のポスドク、3名の大学院生が在籍しています。ポスドクのうち3名が教授のグラントで雇われていて、他は資金を持って滞在している人たちです。ハーバードでは中程度のサイズのラボだと思います。出身地は多様で、教授を含めたアメリカ人3名以外は、みな国籍が異なります。設備はとても充実していて、特に私は計算機を使った作業が主なので、大学が所有するodysseyという13,000以上のコア数を持つスーパーコンピュータを使用して研究を進めています。


Hartl教授と私たち夫婦

私は住居を研究室から歩いて20分くらいのところに構え、毎日歩いて通っています。大学では朝は9時頃から、夜は7時くらいまで研究しています。研究室のデスクにいることが多いですが、歩いて5分くらいにあるロースクールのカフェテリアがとても快適で、Peet’s coffeeや美味しい日替わりスイーツ(アメリカではとても貴重!)なども楽しめるので、ラップトップを片手にそこで1、2時間程度作業する日も多いです。アメリカでは研究者も5時くらいには帰宅するのが一般的なため、19時まで研究室に残っているのは私と中国人のポスドクの二人、ということが多いです。もちろん自宅でも研究を続けているので、ラボメートにメールを書けばたいていすぐに返事が返ってきます。また、研究室有志の「ベンチプレス同好会」の活動が週に一二回あり、私を含めたメンバーは揃ってジムに通っています。ジムは夫婦会わせて年間約$100という破格!施設も申し分無く、入会しない手はないと思います。


「ベンチプレス同好会」の面々が夜な夜な集う大学構内にあるジム
ジムはこのほかにもキャンパス内に点在する。


Hartl教授は論文に加えて遺伝学に関する著書が多数あり、共同研究を多数マネージメントされているので、なかなか会って話しができないのではないかと多少危惧していました。しかし、Hartl教授は現在大学での講義を2年に1 学期のみしか受け持っておらず、打ち合わせや学会や講演等に参加するとき以外、つまりほぼ毎日、朝9時から5時ごろまで一日中研究室にいらっしゃいます。教授室の扉が開いているときはDiscussionに応じられるとき、閉じているときはNG、というサインになっているので、空いているときにノックをすると、たいていすぐに話し合いに応じて下さいます(それかGive me five minutes!といって少し待つときもあります)。Hartl教授はこちらが質問やコメントを求めると色々と返してくれますが、強要することはありません。また、他に詳しい方との共同研究の可能性も示して、その調整等をいっさい引き受けてくださるなど、研究に専念できように環境を整えてくれます。研究室で初めてお会いしたときに「心地よく研究を進める環境を作るのが自分の仕事なので、もし困ったことがあったら何でも相談してくれ」、という言葉をかけてもらったことを今でも覚えています。後に分かったのですが、この研究室の運営スタイルはHartl先生のメンターであったJames F. Crow先生のものを参考にしているようです。先日Crow先生がお亡くなりになる直前に、Hartl教授はCrow先生との交流の回顧録をGenetics誌に寄稿しています(Hartl DL. James F. Crow and the art of teaching and mentoring. Genetics. 2011 189(4): 1129-33)。その文章から、Crow先生の研究室運営方法がまさに私の現在の研究室の状況とそっくりであることに気づきました。こういった研究室の文化が継承されていくことはとても興味深いと思います。また、アメリカに身寄りのいない私たち夫婦へのお気遣いから、新年にはHartl教授ご自宅のパーティーに招待していただき、奥様や息子さんらと一緒にとても楽しい時間を過ごしました。

研究室の進捗セミナーが毎週月曜の15:00~16:00、そして外から講師を呼ぶ学科のセミナーが毎週水曜日の11:00〜12:00にあり、それに加え近隣のMITやメディカルスクールなど含め、毎日様々なセミナーが開催されています。メーリングリストやWeb上のカレンダーを参照するなどして予定を確認します。お昼の時間帯に行われるセミナーでは軽食が提供されることもあり、ランチ代を浮かすこともできます。ただ、色々なセミナーに参加しているとその分研究する時間が減ってしまうので、どれに参加するのかを選ぶ必要があるのですが、それも日々のささやかな楽しみです。また、毎週金曜日にはHappy Hourという企画があり、学科ごとにピザやビールを振る舞ってくれます。基本費用はかからず、所属研究室以外の方々と話しができるちょっとした社交場となっています。

前のページへ 次のページへ

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.