医学生物学研究者のための英文履歴書作成講座
Tweet第9回(最終回)(更新日:2012年12月28日)
Narrative Reportを書く上での注意点
今年も残りあと僅かとなりました。年末は1年を振り返る時期なので、仮に就職活動/転職活動などをしていなくても自分の履歴書をアップデートする良いチャンスではないかと思います。
さて、本連載の最後の記事は、前回に続いてNarrative Report(自分の経歴を文章で表す項目)についてです。
日本人研究者は、基本となる英語力(文法および読解力)は、英語を母国語としない他の研究者よりも一般的にはずっと高いです。しかし、英語の文章を書くということに関しては苦手意識を持っている人が少なくありません。また、自分のことを“客観的に見えるように”アピールする文章を書くことにいたっては、ほとんどの人が出来ていません。これは、英語の問題というよりも、文化背景に原因があります。
本連載は英文履歴書講座なので、その文化背景に関しては深入りはしませんが、とにかく日本人研究者は自分を上手く文章でアピールする経験がありません。そのため、前回の最後に、まずは“日本語”で自分を表現することをお勧めしました。
ここで注意すべきことは、一回で完璧なNarrative Reportを書こうとしないことです。履歴書というのは時とともに変わっていき、それに応じて自らの経歴を文章で示すNarrative Reportも何度も改訂することになります。したがって、まずは日本語でNarrative Reportを書いてみるというのが正しい姿勢なのです。
いったん日本語のNarrative Reportを書いてみたら、次はそれを英語に直してみましょう。直訳で構いませんし、テストではないので辞書などを使っても全く問題ありません。英語と日本語では、文章の構成が異なりますので、いざ英語に訳そうとすると難しい場合があるかもしれません。その場合は、日本語文章を少し変更して英語に訳しやすい文章に変えてから英訳をすると都合が良い場合があります。
いささか宣伝じみてしまって恐縮なのですが、私どもでは英文履歴書作成だけでなく英訳サービスも行っておりますので、必要がございましたら、いつでもご連絡ください。本連載をお読みの方には割引サービスをご提供できるかと思います。
さて、話をもとに戻して、英訳した自分のNarrative Report(英語版)を最初から最後まで読んでみてください。もし文章に矛盾を感じずにサッと読めるようでしたら問題ないと思います。ですが、自分で「どこかおかしい」と感じる部分があったり、何となくわかりにくい箇所があったりした場合は、そこを重点的に修正していくと良いでしょう。最終的には何のストレスも感じずに文章を読める状態にまでするのが理想です。
もし、どうしても自分の文章が読みにくいと感じてしまったら、以下の点がクリアできているかを確かめてみましょう。
・自分は何の専門の研究者なのかが明記されている
・自分はどこでどのような研究で学位を取得しているのかが明記されている
・自分の研究の最終目標は何かが明記されている
・自分のこれまでの研究で何が明らかにされたかが明記されている
・自分の研究分野における自らの研究成果の位置づけが考察されている
・自分はこれからどのような研究をしていきたいのかが書かれている
役職や研究者としての経験によっては、他にも入れるべき項目があるのですが、まずは最低限上記の項目が入っているかを確認すると良いでしょう。
ただし、最初にも述べましたが、一回で(一日で)完璧なNarrative Reportを作成しようとするのはお勧めしません。人にはとても見せられないようなNarrative Reportに感じられても、まずは一回文章を作成してみることが必要です。そこから段々と良いものにしていけばいいだけのことです。
短い間でしたが私どもの連載にお付き合いいただきありがとうございました。この「医学生物学研究者のための英文履歴書講座」が何かの形で皆様のお役に立てたら幸いです。来年も皆様にとって素晴らしい1年でありますように。
執筆者:BioMedEigo, LLC
BioMedEigo, LLC(http://biomedeigo.com)
医学生物学分野の日本人研究者を語学面でサポートすることを目的として、ハーバード大学医学部に在籍する研究者らが設立した会社です。 Twitter(http://twitter.com/#!/BioMedEigo)で英文履歴書作成のtipsなどを紹介しています。