米国グリーンカード取得の体験談



第1回(更新日:2013年8月1日)

はじめに〜米国での研究にどうしてグリーンカードが必要なの?


***はじめに***
BioMedサーカスをご覧のみなさんの中には、アメリカ在住だったり、あるいは将来的にアメリカに渡ろうと考えている方が多いのではないでしょうか。

私はいわゆるバイオ系ポスドクとしてアメリカに渡りました。渡米当時は数年で日本に帰るつもりだったのですが、紆余曲折を経てアメリカのグリーンカード(永住ビザ)を取ることになってしまいました。

グリーンカードを取ったと言うと、ちょっと年配の人などからは「アメリカに骨を埋めるつもりなの?」と聞かれることがあります。ですが、実際はそんなことはありません。むしろ、アメリカである程度落ち着いて研究していこうと思うと、どうしてもグリーンカードを取る必要性が出て来ます(と言ったら言い過ぎかもしれませんが)。

でも、多くの日本人研究者にとっては、グリーンカードってどうやって取るの?という感じではないでしょうか。実際に私もそうでした。そのため本連載では、自分の経験を踏まえてグリーンカード取得について書いてみようと思います。

ただし、私は弁護士の資格はなく(当然ですが)、この文章は私の経験に基づいた私個人の理解であるということをご理解ください。実際にグリーンカードを申請する際には、弁護士等の専門家の意見を仰ぐことをお勧めします。ということで、本連載のご利用はあくまでも自己責任ということでお願いいたします。

***グリーンカードの必要性***
日本人研究者がアメリカに留学する場合、最初のビザはJ1ビザ(交換留学生用のビザ)であることが多いと思います。そして、アメリカ滞在が3年を超えるあたりから、少しずつH1Bに切り替える人が出て来ます。

H1Bビザは就労ビザで、一般に外国人がアメリカで働くために必要なビザとなります。そのため、実際のところ、ポスドクをしながらアカデミアの独立ポジションを獲得するべく就職活動をする場合でも、H1Bビザがあれば充分でグリーンカードの有無はあまり問題になりません。

しかも、アカデミアの独立ポジションを得た場合は、大学側がグリーンカードの取得をサポートしてくれることが多いため、逆にポスドクの間に無理してグリーンカードを取る必要がなかったりします。

しかし、アカデミアの独立ポジションを獲得するためには、アメリカでのフェローシップやグラントを取っておいた方が有利なことが多いです。そして、そのようなフェローシップやグラントの多くは、アメリカ国籍あるいはグリーンカードを持っていることが応募条件となっているものが非常に多いです。そのため、アメリカで独立を!と考える人は早目にグリーンカードの取得を考えた方が良いと思います。

また、アメリカで企業に就職しようとする場合(アカデミアから企業)、状況はもっと切実です。先にも述べたように、外国人がアメリカ企業で働くためには、一般には就労ビザであるH1Bビザが必要となります。このH1Bビザは、雇用主が変わる度に申請し直しとなります。そのため、アカデミアでH1Bビザを持っていても、企業に移るためには新たにビザ申請をしなければいけません(雇用主が大学から会社へと変更になるため)。ビザ申請は書類手続きが煩雑で、ビザが発行されるまでには時間もかかります。一般にアメリカの企業はすぐに働き始められる人材を欲しがるケースが多く、グリーンカードを持っていない外国人候補者は避けられる傾向にあります。

これらのような経緯から、もしアメリカで腰を据えて研究活動をしようと思うのであれば、アカデミアや企業を問わず、グリーンカードの取得の重要度はかなり高くなります。ということで、次回からは、実際にグリーンカードの取得についての私の体験談をご紹介しようと思います。

執筆者:グリーンカードを保持している日本人研究者@アメリカ

(注:本連載はあくまでも一般個人の体験談です。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、BioMedサーカス.com及び著者は一切の責任を負いかねます。)

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