研究者のためのライフハック的思考術



第1回(更新日:2013年10月21日)

研究者としてのキャリア目標を設定する

「ライフハック(Life-Hack)」は自らの業務を効率よく行うことに主眼を置いたテクニック群として、2004年頃にIT業界を中心に誕生した「仕事術」のことです。しかし、このライフハックという考え方は、いまや単に「業務の効率化のための手段」という枠を超えて、IT業界のみならず色々な分野にまで広がりをみせています。事実、「人生をいかに効率よく過ごすか」といった内容までにもライフハックが応用されるようになってきました。

そこで当連載では、私達のような研究者がライフハック的な考え方をどのように実践すれば「研究者としてのキャリア構築」を効率よく進められるかを考えていこうと思います。

前述のようにライフハックは物事を効率よく進めるための「テクニック群(単なる手法)」です。そして、それら手法は知ってしまえば誰でも実践することが可能です。現在までに様々なライフハックが産み出され、それらを集めて実践することに熱心なライフハック信者も大勢誕生しています。

一方で、ライフハック信者を揶揄する「ライフハック(笑)」という表現も登場しています。これは、ライフハック信者の中にテクニックの収集に集中するだけで業務の進行は全く捗らない人が一定数いることと関係しています。すなわち、ライフハックというテクニックにばかり気をとられると肝心の目標達成を忘れてしまう恐れがあるということです。また、このことは自分が成そうとしている目標(目的)がなければライフハック的な考え方を実践しても意味がないということをも意味します。

そこで第一回目となる今回は、ライフハック的な思考術を充分に活用するための前段階として、研究者としてのキャリア目標を設定する方法を紹介します。必要なものは「レターサイズ大の用紙」「ボールペン」「誰にも邪魔されない時間(1時間以上が望ましい)」の3つです。

はじめに、用意した紙に等間隔に4本の横線を引いて5つのスペースを作成します。そして、一番下のスペースの左上に小さく「5年後(20XX年XX月)」と記し、今から5年後に自分がどのような研究者になっていたいかをそのスペースに思いつくまま書きます(何項目あっても構いません)。

ここで注意するべきことは2点あります。1点目は自分の目標を「正直に」書くことです。本当は○○になっていたいけど無理そうだから××にしておこう、ということは避けてください。2点目は目標を「具体的に」書くことです。例えば、「論文をたくさん出せる研究者になる」という曖昧な表現を避けて「論文を年に3報出せる研究者になる」のように数値などを入れます。

5年後の目標を全て書き終えたら次のステップに進みます。用紙一番上のスペースの左上に小さく「現在(20XX年XX月)」と記します。そして、5年後のスペースに書いた項目に対応する現在の自分の状態を書きます。例えば、5年後のスペースに「日本の国立大学の准教授になる」と書いたら、現在のスペースには「○○大学のPost-doc」と記します。

その次は下から2つめのスペース左上に小さく「3年後(20XX年XX月)」と記し、そのスペースには「現在」と「5年後」のギャップを埋めるためには「3年後」にどのような状態になっているべきかを考えて記入します。その後は同じ要領で、上から3つめのスペースに「1年後(20XX年XX月)」、上から2つめのスペースに「3ヶ月後(20XX年XX月)」にあるべき状態を記入します。

以上でライフハック的思考を活用するための準備が整いました。上記で作成した目標管理シートは定期的にチェックできる状態にしておくことが重要で、常に持ち歩く手帳などに記入(添付)しておくと便利です。手帳はライフハックに必要不可欠とも言えるツールなので、次回は北米東海岸で手に入るお勧めの手帳について紹介します。


本記事は2010年~2011年に北米東海岸の研究者ネットワークJaRANのメールマガジンで連載されていた記事を転載したもので、記載してある内容は連載当時の情報となります。

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