英語の論文を整理する方法



第1回(更新日:2016年1月11日)

なぜ、論文を管理することが大切なのか

みなさんが英語の論文に出会ったきっかけはなんでしたか。たとえば抄読会。みなさんの研究室でも定期的に開かれているかもしれません。ところで、その読み終わった論文、どうされていますか。

最新の情報を調べる上で欠かせない「論文を読む」という作業。これは研究者だけに必要な仕事ではありません。私は医師ですが、臨床研究や最新の治療を調べるときにも論文を読むことが必要です。ほかにも、学会で発表するとき、論文を出すとき、また、本を出版するときなど、論文に目を通す機会はたくさん存在します。

■ 簡単に入手できることが新たな問題が生む

約10年前、ほしい論文を手に入れるのにはとても苦労しました。何と言っても図書館でほしい論文が掲載されている雑誌を見つけることが大変で、なんとか見つけてコピーしようとしても、コピー機の前には行列ができていることもしばしば。代行コピーサービスなどもありました。

ところが最近では、ほしい論文を出版社などのホームページから簡単にダウンロードできるようになり、非常に快適です。そのため、気軽に「これ、おもしろそうだから、とりあえずダウンロードしておこう、印刷しておこう」ということができるようになりました。

しかし、ここに新たな問題がひそんでいます。論文をどのように管理すればよいのかという問題です。論文があまりに身近になってきたため、気づけば机の上に論文のコピーが山のように散らかっていたり、コンピュータのダウンロードフォルダの中が、よく分からないタイトルのPDFで埋もれていたりという問題に、私たちは出くわすようになってきました。


(写真1:論文が散らかった机)

その結果、論文を読み始めて「これ、前に読んだ論文と同じだった」とか「この前印刷した論文、今欲しいのにどこに置いたか分からない」、「確かダウンロードしたんだけれど、どこのフォルダに入れたんだろう」などという、悲しい状況が起こってしまうのです。

このような事態を、実はすべて私も経験しています。仕事をはじめて間もない頃は、外来や入院患者さんの診察をすることはあっても、英語論文を読むことはごく稀だろうと思っていました。ところが、循環器内科や腎臓内科、ICU(集中治療室)、小児科など、初期臨床研修中に各科の抄読会に参加するたび、また、上司から論文を渡されるたび、保管する英語の論文数はうなぎのぼりに増えていきました。

しかも、これらの論文は、医学雑誌という共通点はあるものの、その中身は科によって大きく異なります。このようなテーマがバラバラである論文を一体どのようにして保管しておけばよいのか、誰も教えてはくれませんでした。もしかすると気づかない間に教わっていたのかもしれませんが、若い頃は、まだ論文を管理することの大切さが分かりません。クリアーフォルダーに入れて本棚にしまっておけば十分だと思っていました。

■ 論文管理を失敗すると引っ越しのわずらわしさが待っている

私は仕事上、転勤が多いのですが、引っ越しは本当にわずらわしいものです。荷物を整理し、段ボール箱に詰めて運んで、また新天地で開封するという作業。たぶんもう使わないだろうなと思う荷物も、捨てられずに毎回運んでいます。

もちろん、捨てられるものかどうか中身を吟味することもあるのですが、そうするといっそう悩みはじめて、思うように荷物の整理が進まなくなるのです。そして、運ぶ荷物は次第に増えていきます。

実は、論文にも全く同じことが言えます。抄読会で読んだ論文、上司から渡された論文、印刷して置いてあった論文・・・これらの論文の山、クリアーフォルダーの山を管理するのは、まさに「引っ越し」。悩んでは捨てられず、すべて置いておくものの読まれないまま時は過ぎ、また次の論文が机の上に置かれていって、その数は次第に増えていくのです。

この論文管理の課題は、印刷されたものに限った問題ではありません。最近は論文をダウンロードしたファイルとして所有することも増えてきました。このファイルの管理も次なる課題です。職場のコンピュータにもファイルをコピーして保管しておく、コンピュータを買い替える、USBメモリーやハードディスクにバックアップファイルを作成する・・・これらも全て、いわゆる「引っ越し」。名前や保存先がバラバラな論文のデータを、同じファイルがあるのかどうかも分からないまま、とりあえず全ハードディスクのコピーを繰り返している、という経験がある方も多いのではないでしょうか。


(写真2:コンピュータのフォルダにあふれる正体不明のPDFファイル)

■ 時代に応じた論文管理方法があるはず

私が英語の論文に初めて出会ってから約10年。時代は本当に変わりました。学術雑誌から読みたい論文を見つけて論文をコピーする紙媒体が中心だった論文収集が、ウェブサイトからファイルとしてダウンロードできる時代へとなりました。

この数年は、GmailやDropbox、Evernoteなどのクラウドサービスも広く使われるようになってきています。ハード面でも、コンピュータのほかにタブレットやスマートフォンが登場してきました。論文管理法は、かつてはクリアーフォルダーで問題なかったかもしれませんが、様々なツールが使える今、よりスマートな方法がきっとあるはずです。

本連載では、私の約10年の経験をもとに、論文管理の仕方を検討してみます。机の上が、コンピュータのフォルダの中が、キレイになる方法とは?同じ論文を何回もダウンロードすることがないように、読むことがないようにする方法とは?私なりの一つのこたえを導き出そうと思います。


執筆者:研究もしている医師
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