英語の論文を整理する方法



第7回(更新日:2016年4月5日)

管理した論文を活用する

どうして論文は増えていくのでしょうか。自分の研究に関連した情報を得るため。自分の研究とは異なるけれど、自分が個人的に興味のある内容について最新の知見を知りたいため。日々の抄読会をこなすため。論文を書くため。いろいろあると思います。

今回は、集めた論文を上手に活用する方法を三点ご紹介します。


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■ その1. データを同期しておく

今までも「同期できる」ことは長所の1つと述べてきました。種々のデータがアップデートされていくコンテンツを管理するので、どのデバイスからでも最新版にアクセスできるようにしておくことは大きなメリットです。アプリをいくつか紹介します。

Dropboxは、無料で始めることができます。Windows PCやMac、スマートフォンなど様々なハードウェアからアクセスすることができますし、web版も存在するため、とても使いやすいオンラインストレージサービスのひとつです。PCやMacの論文管理フォルダをDropbox内に作っておけば、ファイルの更新があるたびにインターネットを介してデータがweb上にアップロードされます。その後、各デバイスにインストールされているDropboxのアプリに最新データが同期されます。同期後は、別のデバイスからアクセスしても最新版のデータを参照することができます。

One Driveは、マイクロソフトが提供しているサービスです。少し前までSky Driveと呼ばれていました。無料で始めることができます。WordやExcel、Power Pointなど、マイクロソフトのアプリを利用している場合、保存先にOne Driveを指定できます。もちろん論文PDFも保存できます。

Google Driveも無料で始められるサービスです。GmailなどのGoogleサービス間で、オンラインストレージ容量が共有されています。スマートフォン用のアプリもあります。

boxも無料です。使い方はDropboxに似ています。スマートフォン向けのアプリもあります。

その他、bitcasa、MEGA、など、オンラインストレージサービスは他にもたくさんあります。ただし、これらのサービスは突然中止してしまったり、有料化したり、など、サービス内容が変更される可能性があるということに注意が必要です。


■ その2. 読んだ論文にコメントを残しておく

論文が増えていくと、読んだのか、読んでいないのか、分からなくなってくることがあります。また、同じようなテーマの論文が増えてくると、どれが有用な論文だったのか後で探すのも困難です。そこで、読んだ論文に「読んだ証」をつけていくことをおすすめします。

たとえば論文管理ソフトでは、未読と既読を表すことができるものもありますし (図1)、重要かそうでないかをチェックしておくこともできます。その他、一言コメントを残してみてはどうでしょうか。「methodsが参考になる」「図の提示の仕方がうまい」などの情報も残しておくと、後で便利です(図2)。



図1. Mendeleyの☆と緑丸のマーク:Mendeleyでは、重要と思われる論文に、
自由に星印をつけておくことが可能。また、緑丸の点灯は未読であることを示している。



図2. コメントの入力の例:後から見返すときに便利なように、一言コメントを残しておくと
便利。読んだ証にもなる。私の場合、星を使った五段階評価、役立つかどうかなどを残している。


■ その3. Reviewだけでなく、一般のJournalも集めておく

論文を読み始めた頃はきっと気づかないと思いますが、論文にはいくつか種類があります。研究結果を報告する、いわゆる論文「Journal」、内容が短い「Letter」、あるテーマをまとめた「Review」などです(図3)。

私は医師ですが、症例から学ぶ「Case report」や画像診断のクイズのようなものもあります。知らない内容を勉強するには、Reviewが便利です。きれいな図が使われていることも多く、現在までに分かっていること、不明なこと、などの情報が手に入ります。ただし、Reviewばかりを集めておくのはあまりおすすめしません。

もし将来自分でJournalを書くつもりならば、Journalも集めておきましょう。まずは、Reviewのreferenceに載っている論文を探すのが良いでしょう。英語の表現の仕方、Methodの書き方、グラフの書き方、などを参考にできるからです。



図3. Cell Pressのトップページ:論文と言っても、CROSSTALK、REVIEW
FORUM、REVIEW、RESEARCH、と複数のタイプの論文があることが分かる。

論文を集めて保管しておくだけで勉強したつもりになってしまっていては元も子もありません。集めたからには積極的に利用していきましょう。

通勤途中にスマートフォンで読む、読んだ論文を後で見返す、自分が論文を書くときに英語の表現方法を参考にする、など、集めた論文を上手に活用できて初めて、管理しておく重要性が分かることもあるでしょう。その他にも、自分独自のルールを決めて上手に論文を集めて、活用してみてください。


執筆者:研究もしている医師
http://camera-research-doctor-144.tumblr.com/

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