Nature/Scienceのニュース記事から
Tweet第81回(2015年2月9日更新)
ラボのサイズは大きければいいというものではない
最も多くの論文を出すのは10〜15人規模のラボであるという調査結果がPeerJ PrePrintsに発表された。
イギリスの生物学研究のPI(Principal Investigator:ラボの主宰者)398人を対象に、5年間で何報の論文を出したかを調査し比較した。調査の結果、ラボの所属人数は平均7人(PIと6人のメンバー)であり、PI以外のメンバーの数は0人から30人であった。
ラボの人数と論文数の関係を解析したところ、ラボにおけるPIの論文数への貢献度は5年間で平均10報余りであることがわかった。そして、ポスドクが1人加わるごとにラボから出る論文数は5年間で3.5報増加していた。また、博士課程の学生の場合は、1人加わるごとに5年間で1報の増加が見られた。
ただし、出した論文のIF(インパクトファクター)も考慮に入れた場合には、ラボの人数が10〜15人程度に達すると、論文数における各ラボメンバーの寄与度は減少していた。
この解析結果を元に、著者らは以下のような結論を導きだしている。
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・PIはその他のラボメンバーに比べて5倍ほど生産性が高い。
・よってPIはラボの生産性の主要な駆動力になっている。
・ラボのサイズが10〜15人程度を超えてくると、論文発表数に対する各メンバーの寄与度は減少してくる(一人当たりの生産性が下がる)。
・大学や研究機関は、人を採用する際にこのような傾向を考慮すべきである。例えば、ポスドクをもっと雇うよりもPIの数を増やした方が論文発表は増えるかも知れない。
・ただし、最適なラボの規模の結論を出すには今回の調査の規模は小さすぎる。
・PIは自分のラボから出る論文には、実際に貢献していなくても全てに好き放題に名前を載せているという批判がある。しかし実際には、イギリスではラボの規模は小さく、PIは自分のラボから出る論文には著者となるための必要な科学的貢献をしていると思われる。
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しかし、本研究の検定や結果の解釈には多くの議論がなされている。この研究成果を紹介したNature Newsのコメント欄にも、PIのみのラボが5年間で10報もの論文を出せるとは驚きだ、などという投書がされている。
ラボの規模と研究の生産性との関係を明らかにするには、調査や検定の方法、また国ごとにおけるラボの状況の違いなどを考慮する必要があるかもしれない。
ちなみに、この調査結果の著者(最終著者)は、イギリスでラボを主宰している研究者であり、自身のラボにはポスドク1人と博士課程の学生2人が在籍している。
http://www.nature.com/news/bigger-is-not-better-when-it-comes-to-lab-size-1.16866