Nature/Scienceのニュース記事から
Tweet第86回(2015年8月12日更新)
エボラワクチンの治験について、Lancetに発表された中間報告の概要
エボラウイルスのSaar株が産生する表面糖タンパクを発現するよう改変された水疱性口内炎ウイルス (rVSV-ZEBOV)を用いた治験が行われた。治験実施場所はギニアである。
新しくエボラの確定診断が出たら、その患者と接触のあった人、さらにそれらの人々と接触のあった人々が治験の対象となった。これらの人々は、2つのグループに分けられた。1つは、すぐにワクチン接種するグループ、もう1つは21日後にワクチン接種するグループである(下図参照)。
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・2つのグループそれぞれにおいて、18歳未満や妊娠中などの理由でワクチン接種出来ない人を除いたのが”vaccination eligible”
・さらにその中から、ワクチン接種の同意が得られないなどの理由でワクチン接種を受けなかった人を除いて、実際にワクチン接種を受けた人を”vaccinated”とした
・これらの対象者について、PCRでポジティブかつ症状が出ている場合、感染と判定
・潜伏期間が10日程度であること、ワクチンが効果を発揮するのに要する期間が不明であることを考慮して、10日目以降の感染のみカウント
比較したのは以下の2群(上図参照)
(A)すぐに接種のグループの中で実際に接種された2014人
(B)21日後に接種のグループの中で、vaccination eligibleの2380人
(実際に接種された1498人プラス接種されなかった882人)
結果
・(A)では2014人中0人が感染、(B)では2380人中16人が感染
・Vaccine Efficacyは100%
もう少し詳しく見ると、すぐに接種のグループの中でも10日目以降に感染した人は8人いたが、うち6人はvaccination eligibleだが実際には接種を受けなかった1021の中にいた。残り2人は、vaccination eligibleでなかった1088人の中にいた。
つまり、感染した8人は全て、ワクチンを受けなかった人であった。さらに、解析には含まれなかった10日目までの結果を見ると、直後に実際にワクチン接種を受けた2014人のうち、9人は感染している。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2815%2961117-5/abstract