研究者の声:オピニオン
Tweet2013年1月5日更新
ある学生の疑問〜学術雑誌のシステムについて〜
博士課程の学生です。私みたいな未熟な研究者(の卵?)が、このような場所に寄稿しても良いのか悩んだのですが、これから研究者を目指す自分にとって、この業界について非常に疑問に思っている点があったので文章にまとめてみました。
いつもは自分が読む側であったウェブサイトに自分が書いた文章が掲載されるので、少し緊張しながらこの文章を書いています。このオピニオンのコーナーは、掲載された記事だけでなくTwitter上で様々な人の意見を見られるのがとても楽しいので、批判コメントも含めて私の疑問に色々な人に答えてもらえればいいなと思っています。
私は本名でTwitterをやっていますが、自分のTwitterアカウントで今回の疑問を出して見ず知らずの人に叩かれたりすると凹んでしまうので、今回はペンネームを使わせてもらっています。ネット上で匿名での活動は好ましくないと思う人がいるのは重々承知しておりますが、どうぞご容赦ください。
さて、私の疑問ですが、それはズバリ論文の投稿料・掲載料に関してです。
私が学部4回生で研究室に配属になったばかりの頃、先生や先輩たちが研究論文を雑誌に掲載させているのを見て、研究者として尊敬+憧れの感情を持つとともに、印税(もしくはそのようなもの)をもらってるんだろうなぁと思って自分も頑張ろうと思っていました。でも、お金のことを聞くのはその頃の自分にとっては難しかったので、具体的にいくらもらえるのかとかは聞きませんでした。でも、飲み会のときとかに、先生におごってもらったり先輩が少し多めに出すのを見て、たくさん論文を出してるからたくさんお金をもらってるんだろうなぁと少し羨ましく思った記憶があります。
その後、博士課程に進む決意をして博士課程への進学が確定したときに、いつも面倒を見てくれていた准教授の先生に思い切って質問をしてみました。そのときにどんな言葉で質問したかは覚えていませんが、「論文を出すといくらくらいもらえるんですか」とか「やっぱり良い雑誌の方が原稿料も良いんですか?」とかと聞いたと思います。自分の質問の言葉はあまり覚えていませんが、その答えは今もはっきりと一言一句覚えています。先生は「逆逆。こっちが払うんだよ。論文を出せば出すだけ貧乏になるんだよ。面白い世界だろ。」とやや自嘲気味に笑って答えてくれました。
私はその答えを聞いて頭が完全に混乱しました。その後にネットや書籍などで色々と調べて、学術論文に印税のようなものはないこと(依頼された総説論文には稀に謝礼が支払われることがある)、ランクの高い雑誌やオンライン雑誌には掲載料(20万円以上も珍しくない)がかかること、更に一部の雑誌には掲載料だけでなく投稿するためにお金がかかること(論文がリジェクトされても投稿料は戻ってこない)、などがわかりました。
でも、これっておかしくないですか?私たちの論文を掲載している雑誌は、その雑誌を購読してもらうことで収益を得ているわけですよね。言ってみれば、雑誌の中身(コンテンツ)は商品なわけです。それなのに、商品を仕入れるのに、お金を払わずに逆にお金をもらっているということになるんです。別の言い方をすれば、そういった雑誌社は、お金をもらって仕入れた商品を売っているわけです。
私はまだ学生なので世の中のことがあんまりわかっていないのかもしれませんが、自分の常識としては、このシステムは非常に不自然に思います(逆に言えば、このシステムを考えだした人はすごいと思います)。そのため、このようなシステムは他の分野でも珍しくないのか疑問に思いましたので、文章にまとめてみました。
さて、以下は上記のような疑問を文章にしていて思ったことです。蛇足になってしまいますが、せっかくの機会なので付け加えさせていただきます。
今回の雑誌システムの矛盾点(?)にも関係するのですが、今の世の中は研究者にお金が入ってこないような流れにあるような気がしています。もちろん、研究者はお金儲けなどにとらわれてはいけないという風潮があることは理解しているつもりです。ですが、研究者がその働きに応じた収入を得るのは当然で、それが成り立たないと次の世代(特に優秀な層)がこの世界に入ってこなくなるのではないかなと心配に思う気持ちがあります。
実際に、学部生の頃に優秀だなと思っていた私の周りの人は、ほとんど博士課程には進まないようです。それどころか、生物学の分野に進むことすら避けているような印象があります。もちろん私は優秀な人ではないということは自覚しているのですが、自分は小さい頃からこの世界に憧れていたので、生物学の博士課程に進んだことを情報弱者だとかと嘲笑する風潮には抵抗を覚えます。
ですが、世の中はお金を中心に回っているということに少しずつ気づいてきたので(気づくのが遅かったかもしれませんが)、現在の状況では確かに生物学の博士課程に進むのは「得か損」かという観点では「損」になる(=つまりは博士課程進学者は情報弱者)ということも理解できます。でも何となく腑に落ちません。
何だかまとまりのない文章ですみません。「お前は金持ちになりたいのか?それとも研究者になりたいのか?」と言う叱責の声が出るのは承知しています。ですが、私は生物学が好きですし、この分野は大事だと思っています。そして、その研究を続けていたいとも思います。一方で、きちんとした報酬も欲しいとも思っています。
でも、まずはきちんとした業績を出すのが大事ですよね。その上で報酬を要求すればいいのですね。長文かつ駄文失礼いたしました。
執筆者:研究者の卵(有精卵であることを望む)