医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第2回(更新日:2011年7月11日)

博士卒社員はなぜ使えないのか? 2ページ目/全2ページ

一つには、周りの期待が大きすぎるということが考えられます(これにはある種の嫉みの感情も含まれることがあります)。通常は、博士卒社員は同期の修士卒より遥かに高いパフォーマンスを示します。しかし、上記の理由から、パフォーマンスに見合う評価を得ることは簡単ではありません。

また、研究者として充分なトレーニングを受けてきた博士卒とはいえ、会社に入社して1年くらいでは目立った働きをすることは難しいです。アカデミアと企業では、研究の目的が大きく異なっているからです。よほど図抜けた才能(研究以外にも行動力や対人スキルなども含む)を持った人でないと、入社1年〜2年のときに誰もが納得する素晴らしい働きをするのは難しいです。

さらに、上司が『博士卒の新人』という部下を上手く使えないことも、その原因であると思われます。今の上司層(中間管理職クラス)は、博士号を取得して入社した人の割合は少ないため、博士卒の人間がどのような知識・技術を持っているかを知らないことが多いです。そして、そのような人は、博士卒の知識・経験をどのように活用すれば研究グループに役立つかなども理解できていません。

もちろん、博士卒側にも原因があることがあります(全員ではありませんが)。それは、研究能力とは別の人間としての成熟度です。単純に言うと、『俺/私はエリート』という意識に捉われている、ということです。このような周りを一段下に見る態度は隠しきれるものではありません。会社の場合は、小さな仕事でも集団で行う必要が出てくるため、生意気で肩書きが優秀なだけの若造は結果を残すことが非常に難しいです。

このような経緯から、現状では博士卒は『使えない人』というレッテルを貼られやすい環境になっていると思われます。次回は『どうすれば博士卒は使える人になれるのか?』を考えていきたいと思います。ご意見などは、どうぞ遠慮なくphd@biomedcircus.comまでお願いいたします。

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執筆者:川口隆史

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