読書感想文:「ポストドクターの正規職への移行に関する研究」を読んで



その2(更新日:2014年06月22日)

君も僕もみんながポスドク!?

本連載は、文部科学省(正確には文科省直属の国立の機関のようですが)に所属する方が文部科学省のサイト(正確には文科省直属の国立機関のサイトですが)で発表した「ポストドクターの正規職への移行に関する研究(http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-DP106Fullj.pdf)(*ただし内容は執筆者個人の見解)」を読み解いていこうという主旨のもとで始まりました。(一文が長いよ!)(そもそもそんな主旨だったのかよ!)

さて、前回の文章を最後まで読んだ方であれば既にお気づきかと思いますが、この文章は『大変にうっとおしいです』。より短い表現を用いれば『うざい』です。しかも、この記事の内容は、私の個人的見解なので、掲載媒体であるBioMedサーカス.comさんとは何の関係もありません。(なぜ『個人の見解』をこんなに強調するかは、その1を読んでくださいね!)

ということで、前回のおさらいをしつつ、早速(と言っても、既に3段落目ですが)、件の執筆者の『個人の見解(<しつこい!)』に基づいた報告書を読み進めて行きましょう。

前回は、2ページ目にあった注釈の『執筆者の見解』だけで終わってしまったので、今回は3ページ目から読んでいきます。3ページ目は本報告書の要旨が書かれてします。その第一文目の書き出しを引用します。

(引用ここから)
 研究機関に在籍している「狭義」のポストドクターの場合、
 (引用ここまで)

要旨の最初の一文を読み終わる前に頭の中に『???』が押し寄せてきました。『狭義のポストドクター』って何だろう?(ちなみに「きょうぎのぽすとどくたー」で変換したら、「競技のポストドクター」が最初に出て来ました。東京オリンピックの種目にポスドクが加わるといいですね!<意味不明)

『狭義のポストドクター』って、素直に解釈すれば、狭い意味でのポスドクってことですよね?でも、ポスドクに狭いも広いもあるんでしょうか?『ポスドク』を『ポストドクター』と書いているのが何か関係あるんでしょうか?

さて、実はこの要旨には英語訳もついています。さすがは文部科学省に所属しているエリートです(正確には文科省直属の国立機関の所属のようですが)。国際人カコイイ!(ほめ殺しではありませんよ。単に文部科学省に所属してるエリートが羨ましいだけです。(<素直!))

で、その「狭義のポストドクター」は英語でどのように表現されているかを見たんですが、該当部分は『In the case of postdocs in the "narrow sense" at research institutes,』とありました。

ということは、『狭義のポストドクター』はやっぱり狭い意味でのポスドクという意味合いで使われているようです。しかも、『ポストドクター』は『postdocs』と英訳されているので、執筆者の中では『ポストドクター=ポスドク』で問題はないようです。

となると、『広義のポストドクター(ポスドク)』って何だろう?ということになりますよね?ね?ね?(<ウザい)

なので、要旨の続きの部分は適当に読み流して、『広義のポスドク』について解説している場所を、それこそ目を皿のようにして探しました。ちなみに『目を皿のようにする』という表現がこの場合に本当に正しいかを念のためGoogle先生に聞いたのですが、『目を皿のように』という表現は皿を横から見た形である(『目を皿のように=目を細める』)と理解している人がいたようで驚きました。いやー世の中は広いですね。僕の常識あなたの非常識って感じですね!

えっと、何の話をしてたんでしたっけ?

あーそうそう『広義のポスドク』の説明を探したんです。で、見つけました、9ページ目に。そのページには「ポストドクターの定義」が書かれているんですが、その箇所を引用します。

(引用ここから)
 日本でポストドクターという用語が用いられるようになったのは比較的新しく、研究に携わる者という職務と、任期制という雇用形態を同時に示す語であるため、その意味するところは変動的である。「広義」のポストドクターとは博士号取得者、あるいは博士課程修了者全体を指す。一方で、「狭義」のポストドクターとは研究機関や大学に在職し、任期制の研究員として職を得ているものに限定される。
 (引用ここまで)

「そうなの?」と素で驚いてしまいました。

「広義のポスドク」には「博士号取得者あるいは博士課程修了者全体が含まれる」って書いてあるんですが、「広義」とはいえポスドクというものをそういう風(博士号取得者全体がポスドク)に定義しちゃっていいんですか?

それって、リケジョのお姉様方が憧れるRI○ENのユニットリーダーのポストに就いている人もポスドクってことになりますよ。新たな方法で万能細胞を発見してもやっぱりポスドクなんですか???(*例えに深い意味はありません)

さらに、より極端なことを言ってしまえば、RIK○Nのトップのお偉いさん達(ノーベル賞とった人とかも含む)もポスドクってことですよ。そうなっちゃったら、2ちゃんねるのまとめサイトとかで

【悲報】文科省がノーベル賞受賞者をポスドクと呼ぶ【所詮はアカデミだし】

とかって書かれちゃいますよ?

でも、もしそうなったら「狭義のポスドク」な下賎の民が「広義のポスドク」様に向かって「俺たちポスドクって辛いよねー」ってな感じで自分と一緒くたにして話しかけちゃうんでしょうか。

あーやだやだ、実は私はそれなりの職についてるので(こっそり自慢!狭義のポスドクさん達はうらやむとよいよ)、そんな定義(広義のポスドク)が定着したら困るんですよね。

そもそも、件の「ポストドクターの定義」のページ(9ページ目)の下部には、

(引用ここから)
 文部科学省が実施する博士人材に関する4つの主要な調査、『ポストドクター調査』、『博士課程修了者調査』、『学校基本調査』、『民間企業の研究活動に関する調査』におけるポストドクターの定義は以下の通りであり、いわゆる教員を除いているために、近年増加している有期雇用の特任助教や特任准教授が捕捉されていない。また各調査のポストドクターの例示が少しずつ異なり、誤差が発生している可能性がある。
 (引用ここまで)

とあり、文部科学省によるポストドクターの定義は

(引用ここから)
 ポストドクター等:「博士の学位を取得後、任期付で任用される者であり、(1)大学等の研究機関で研究業務に従事している者であって、教授・准教授・助教・助手等の職にない者、(2)独立行政法人等の研究機関において研究業務に従事している者のうち、所属する研究グループのリーダー・主任研究員等でない者を指す。(博士課程に標準修業年限以上在学し、所定の単位を修得の上退学した者(いわゆる「満期退学者」)を含む。)」
 (引用ここまで)

としてあります。

これって良く読めばわかるんですが、文部科学省のポストドクターの定義は非常に自然で、いわゆる世間一般(研究者自身も含む)が考えるポスドクの定義と一致しています。

それなのに何故、この報告書では「広義の」とか「狭義の」とか「ポスドクの意味するところは変動的である」とか、わざわざ話をややこしくするような書き方してるんでしょうかね?

しかもこの報告書、以前の文部科学省の定義ではポスドクとされていなかった「特任助教」や「特任准教授」もポスドクに入れようとしてますよね。これって

【知ってた】特任助教はやっぱりポスドクだった【特任准教授も】

とかって感じでまとめサイトで取り上げられてしまいますよ?

でもなんで文部科学省が既に一般的なポスドクの定義を出しているのに、同じ文部科学省(正確には文科省直属の国立の機関のようですが)が自分のところのサイト(正確には文科省直属の国立機関のサイトですが)にアップロードしたポスドクの報告書に、「ポスドクの定義」なんていう根本的なところに疑問を生じさせるような文面があるんでしょうね。

は!(<何かひらめいた)

だから2ページ目の注釈に「執筆者の見解」とあったんだ!謎は全て解けた!!(<単なる深読み)

というわけで、報告書の内容に全く切り込めないまま本連載の2回目を終わってしまいそうです。ちなみに、「ポスドクの定義」については20ページ目にもあるのですが、そこで引用している文献5の該当箇所は、

(引用ここから)
 プロジェクトで雇用されている者全員をポスドクとみなすグループもあれば、日本学術振興会の特別研究員(PD)のみをポスドクと考えているグループもあった5
 (引用ここまで)

なのですが、その引用文献5は「5グループインタビューの内容・詳細は現在、整理中である.」となってるんですよね。こんな引用の仕方ってあるんでしょうか?これって我々の学術論文では「私信」扱いで引用文献にはならないんじゃないでしょうか。(私信ですらないかも。だって、単に誰かがグループインタビューで発言した(証拠なし!<ここ重要)内容なだけですもんね)

ということで、またしても最後がグダグダになってしまいましたが、今回はこれで終わりです。

読んでる皆様もそうでしょうが、書いてる私もこの連載にかなり飽きてきました。なので、読者の皆様が「こんな連載はけしからん!きちんとまじめにポスドクのことを調査している報告書をバカにするとは何事だ!こんな連載は打ち切るべきだ!!」という鼻息の荒い投書をBioMedサーカス.comさんに多数送っていただければ、無事に連載が打ち切られるはずなので、どうぞご協力をお願いいたします(<何の協力?)。

では次回までサヨオナラ。

あ、最後に一つ注釈を。。。

「本RENSAI KIJIの内容は、執筆者の見解に基づいてまとめられたものであり、掲載媒体の公式の見解を示すものではないことに留意されたい」

大事なことだから今回も言っておかないとね(ハート)。

執筆者:広義の意味でのポストドクター

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