Nature/Scienceのニュース記事から



第2回(2011年4月27日更新)

C型肝炎の新薬により広がる希望

今週後半には、C型肝炎の画期的な治療薬をFDAが認可するかどうかが決まることになっている。これらの治療薬はプロテアーゼ阻害薬であり、おそらく認可されると考えられているが、これらの2つの薬はC型肝炎治療の革命の始まりに過ぎない。

全世界で3%の人がC型肝炎に感染していると言われる。C型肝炎は慢性肝疾患を引き起こす。

これまでは、インターフェロンとリバビリンによる1年にもおよぶ治療がなされてきたが、それでも効果があるのは全体の半数であった。しかも、この治療法はインフルエンザ様の症状や疲労感、貧血、鬱などの副作用がある。

現在、C型肝炎のタンパク質をターゲットとした2つの新薬が認可申請中である。1つは巨大製薬メーカーのメルクのboceprevir、もう1つはVertex Pharmaceuticalsのtelaprevirである。いずれの薬も、C型肝炎ウイルスの増殖に必要なNS3-4A proteaseというタンパク質をターゲットにしている。4月27日と28日には、FDAの抗ウイルス薬諮問委員会が、これら2つのC型肝炎治療薬について議論することになっている。

いずれの薬も、従来の治療法と組み合わせて使用すれば、治癒率は75%にまで上昇する。

にもかかわらず、これらの2つの薬は第一世代のプロテアーゼ阻害薬としてほんの数年間もてはやされるに過ぎないだろう。すぐに同じようなウイルスタンパク質をターゲットとする他の薬がもっと出てくるからだ。

いくつかの薬を組み合わせて使用することでインターフェロンを使用せず、なおかつ薬剤耐性を避けることができると期待される。ウイルスタンパク質をターゲットとする薬を3種類組み合わせて使用すれば薬剤耐性を避けることができるだろうという試算もある。

現在、60種類もの化合物が前臨床あるいは臨床治験の段階にある。

2010年にはブリストルマイヤーズスクイブ社が、NS5AというC型肝炎ウイルスのタンパク質を発見したと発表した。このタンパク質は感染性のウイルス粒子の形成とウイルスRNAの増幅に必要である。NS5A阻害薬の臨床治験の初期段階において、たった1日の投与で、血中のC型肝炎ウイルスRNAレベルが2000分の1にまで減少した。この薬は現在臨床治験のフェーズ2にある。

NS5A阻害薬とプロテアーゼ阻害薬を組み合わせて使用することで、従来の治療法が効果を示さなかった11人の患者のうち4人において、ウイルスを完全に消し去ることができた。その後少なくとも24週間はウイルスは検出限界以下であった。

もうひとつのアプローチは、C型肝炎ウイルスが宿主の細胞に入り込むのを阻害することにより、ウイルスが患者の組織内で広がるのを防ぐことである。ウイルスをある一定の細胞内に閉じ込めておくことにより、肝臓全体の障害を抑えることができる。フランスの研究グループによれば、C型肝炎ウイルスはヒトの細胞に入り込む際に、epidermal growth factor receptor (EGFR) というタンパク質を必要とする。EGFR阻害薬は抗がん剤として既に販売されている。この研究グループは、erlotinibというEGFR阻害薬の臨床治験を今年の終わりまでに開始する予定である。

ウイルスの細胞への侵入を阻害するもうひとつの薬であるITX-5061はサンディエゴの製薬会社 iTherXが開発中であり、現在フェーズ2の段階にある。

その他、ウイルスが自分自身のゲノムを複製するのを防ぐnucleoside polymerase阻害薬も、将来的にC型肝炎の多剤併用療法の重要な要素となるだろうと思われる。ニュージャージーの製薬会社 Pharmassetのnucleoside polymerase阻害薬RG128現在フェーズ2の段階にあり、スイスのロシュと共同で開発中である。

http://www.nature.com/news/2011/110426/full/news.2011.256.html

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