Nature/Scienceのニュース記事から



第25回(2012年7月6日更新)

やせ薬が米国で認可される

このほどアメリカで、減量を助ける薬 Belviq(一般名 lorcaserin)が、13年の年月を経てFDAにより認可された。Belviqは、健康的な食事と運動と組み合わせれば、体重を3-4%減少させるのを助ける。BMIが30以上の肥満の人と、BMIが27以上の太り過ぎの人の一部(高血圧や高コレステロール、2型の糖尿病のある人)への使用が認可された。

開発したのはサンディエゴのArena Pharmaceuticals。Belviqに対する安全性のハードルは高かった。1997年にやせ薬のFenfluramineが心臓弁の問題を引き起こすことが判明したために販売中止となった。過去2年の間に、FDAは3つの高肥満薬を、安全性の懸念または効果の欠如のために却下している。3月には、FDAは高肥満薬は全て心血管系へのリスクを調べるべきだと勧告しており、これはただでさえ長期に及ぶ治験をさらに長引かせるものである。

実はBelviqの最初の認可申請は、ラットで発ガン性が疑われたこと、また、心臓弁に対する副作用の可能性を統計的に排除できなかったために、2010年9月に一度却下されている。Fenfluramineと同様に、Belviqは脳内でのセロトニンの作用を模倣することで、食べ物への渇望を抑える。しかし、Belviqは脳のセロトニン2C受容体に対して特異性があり、心筋に発現しているセロトニン2B受容体に対しては作用しない。

Arena Pharmaceuticalsは8000人近くの患者で心エコーを実施し、Belviqを投与しても心臓弁の異常の増加は見られないことを示したため、ようやくFDAはBelviqを認可した。上市後も、長期心血管系試験を含む6つの上市後調査が行われることになっており、うっ血生心不全のある患者はBelviqを使用しないよう指導される。

アメリカでは成人の3分の1が肥満なので、当局はやせ薬のリスクと、肥満により引き起こされる糖尿病などの疾患のリスクのバランスを考える必要がある。

プラセボと比較して、Belviqの効果は、1999年に認可された、脂肪のカロリー吸収を抑えるorlistatと同等である。Belviqを投与された90kgの患者は、1年後には平均3kg余分に減量できた。また、Belviqを投与された患者の20%は体重が10%以上減少した。FDAは、12週経っても体重が5%以上減らない場合はBelviqの使用を中止するようすすめている。

Belviqはさらに、2型糖尿病患者の血糖値を制御できる可能性を2倍に上昇させる作用もあった。

Belviqは、このような効果のある薬ではあるが、食事や運動、生活習慣の改善の代わりになるものではなく、それらの効果を増強させるものである。

http://www.nature.com/news/weight-loss-drug-wins-us-approval-1.10923

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