Nature/Scienceのニュース記事から



第33回(2012年8月30日更新)

エピジェネティック薬がコレステロールの蓄積を減少させる可能性

コレステロール低下薬の市場は200億ドル(約1兆6000億円)と大きく、製薬各社は、現在最もよく使用されているスタチン類を超える治療薬の開発にしのぎを削ってきた。このほど、これまではあまり知られていなかった作用機序の薬、すなわちエピジェネティック薬についての研究が報告され、これについてNature Newsで紹介されている。
http://blogs.nature.com/news/2012/08/epigenetic-drug-may-lower-cholesterol-build-up.html

コレステロールを低下させる薬は、リピトールを初めとするスタチン類が主流であった。これらスタチンは、LDL、別名悪玉コレステロールの産生を抑えるものである。これらの薬は、一部の動脈硬化患者では効果があるが、心臓発作や脳卒中の副作用の危険がある。また、一部患者では効果がないこともある。さらに、多くの患者は高用量のスタチンでしか効果がなく、痛みや吐き気、肝毒性などの副作用が起きやすい。このため、開発対象は、HDL、すなわち善玉コレステロールを増やす薬へとシフトして行った。HDLには、動脈内に蓄積したLDLを除去して、分解のために肝臓へと送る作用がある。

しばらくの間、このような薬を発売するのは製薬大手のファイザーだろうと思われていた。ファイザーのtorcetrapibという薬は第2相臨床試験でHDLを増加させることが示されたが、心疾患による死亡率を上げることがわかったため第3相試験は中止された。

サンフランシスコにある小さな製薬会社であるResverlogixはエピジェネティック薬を開発しており、第2相試験で、HDLの増加させるだけでなく、HDLが機能を発揮するのに必要なApo-A1というタンパクの量を増やすことでHDLの機能も改善するらしいことを示した。第3相試験は2013年の終わりに開始される見込みである。

この薬はブロモドメインタンパクを標的としている。ブロモドメインタンパクは最近、癌やHIV、男性不妊など様々な疾患との関連が示されている。この薬は臨床試験で副作用が見られていないため、これらの疾患領域においても応用が期待される。

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