Nature/Scienceのニュース記事から
Tweet第43回(2012年11月8日更新)
ハダカデバネズミに癌治療のヒントが?
げっ歯類の中には、ハダカデバネズミという長命な種がある。このハダカデバネズミは癌に対する耐性を持っており、これが長命の原因なのだと考えられている。ハダカデバネズミの近縁種であるメクラデバネズミも長命で、その理由は同じく癌に対する耐性だと考えられるが、このほどこれら2種類のネズミは異なるメカニズムで癌に対する耐性を発揮しているらしいことが示唆された。
通常、ほ乳類の細胞を培養皿で培養すると、増殖して1枚の層状になり、培養皿がいっぱいになると増殖は止まる。ところが、ハダカデバネズミの細胞はまるで閉所恐怖症のように、もっと早い段階で増殖が止まってしまう。
メクラデバネズミの細胞も同様に、早期に増殖がとまるのだろうと予想されたが、実際は違った。メクラデバネズミの細胞は止まることなく増殖し、ある時点で一斉に細胞死を起こしたのである。この現象を、論文の著者であるGorbunova博士らは”concerted cell death”と名付けた。
この細胞死は、インターフェロンβというシグナル分子の放出によって引き起こされると考えられるが、何がその原因になっているのかはまだわかっていない。Gorbunova博士は、「この細胞は自らが増殖しすぎていることを感知することができるようだが、そのメカニズムはまだわからない。それが明らかになれば、ヒトの細胞でも同じ現象を起こさせるためのヒントが得られ、これが癌の治療につながるかも知れない」としている。
しかし、メクラデバネズミが癌に対して耐性を示すのは必ずしもconcerted cell deathによるものではなく、単に長期間培養するのに適切な方法を取らなかったために細胞にストレスがかかって細胞死に至っただけかも知れない、という懸念もある。実のところ、メクラデバネズミの細胞を長期間培養できた例はまだない。Gorbunova博士らは、同じ培養条件で培養した他の20種のげっ歯類の細胞は長期間培養できたが、メクラデバネズミの細胞だけは細胞死を起こしたのだという。
http://www.nature.com/news/blind-mole-rats-may-hold-key-to-cancer-1.11741