Nature/Scienceのニュース記事から
Tweet第49回(2013年3月18日更新)
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が造血系幹細胞の移植を助ける
白血病や多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫などの血液の疾患では、造血系幹細胞の移植が効果的な治療法となりうる。ドナーからこれらの幹細胞を採取する際に、現在はfilgrastimという薬物を投与して、幹細胞の骨髄から血中への放出を促している。しかし、filgrastimは必ずしも効果的な薬物ではない。このほどNatureに発表された研究によれば、新たにmeloxicamという非ステロイド性抗炎症薬が幹細胞の骨髄から血中への放出を効率よく促し、これが幹細胞移植時の幹細胞採取の助けとなることが示唆されている。
meloxicamにはプロスタグランジンE2 (PGE2)の働きを抑える作用がある。通常は骨髄にある骨芽細胞がosteopontinを分泌し、このosteopontinが幹細胞を骨髄内にとどめている。PGE2はosteopontinの産生を促進する働きがある。meloxicamはPGE2の働きを抑えることによりosteopontinの分泌を抑え、その結果として幹細胞の血中への放出を促すと考えられる。
また、meloxicamは副作用も少ない。PGE2は胃酸分泌を調節する働きもあるため、通常アスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsは消化器系の副作用を引き起こすことが多いが、meloxicamは他のNSAIDsに比べてこのような副作用が弱い。
現在、meloxicamとfilgrastimの併用についての臨床試験が計画されている。これら2種の薬物それぞれはいずれも既にFDAにより認可されているため、臨床試験は比較的容易であると考えられる。
また、今回の研究結果は、移植された幹細胞をいかに効率よく骨髄に生着させるかの手がかりにもなるかも知れない。なぜなら、骨髄から幹細胞を離れやすくさせることと骨髄に幹細胞をより付着しやすくさせることは表裏一体だからである。
http://www.nature.com/news/painkillers-mobilize-blood-stem-cells-1.12600