Nature/Scienceのニュース記事から
Tweet第51回(2013年4月16日更新)
試験管内で作られた腎臓が、移植を受けたラット体内で尿を生成
死亡したラットの腎臓から細胞成分を取り除いて作られた人工腎臓を別のラットに移植したところ、血液が濾過されて尿が生成された。この成果は、Nature Medicineに発表された。
著者らは、死亡したラットの腎臓を界面活性剤で処理して細胞を取り除き、残った結合組織に2種類の細胞を播いた。すなわち、ヒト臍帯静脈由来の細胞と、新生仔ラットの腎臓から取った細胞である。前者は、血管を作らせるために、後者は腎臓のその他の部分を作らせるために使われた。この方法は2008年に開発されていたが、今回これをラットに移植し、実際に機能させることに成功した。
作られた腎臓をラットに移植したところ、ラットの血液が濾過され、尿が生成された。ただし、尿の生成量は元の腎臓の3分の1程度、クレアチニンの濾過速度は36分の1程度であった。
現在、重い腎臓病の患者は人工透析により生きながらえることができるが、治療は臓器移植によってのみ可能である。しかし、アメリカだけでも10万人の患者が、臓器提供を待っている状態である。
もし今回開発された技術が臨床応用できるようになれば、遺伝子型の合うドナーを待つ必要がなくなるため、ドナーの確保が容易になると考えられる。さらには、もしかするとヒト以外の動物、例えばブタなどの臓器や、あるいは移植を受けたい患者本人の臓器から取った結合組織から人工腎臓を作ることができる可能性もあり、その場合はドナーを確保する必要さえなくなる。
先述のように、この技術により作られた腎臓の機能は、現時点では本物の腎臓に遠く及ばない。しかし、人工透析を始めるのは腎臓機能が正常時の15%以下に下がった場合であるため、もし人工腎臓が本物の腎臓の20%の機能を発揮できるところまで開発が進めば、移植により患者が人工透析から解放されることになる、と著者らは言う。
現在、この他にも、別にグループによって、ヒトの細胞を使って作った腎臓の外部補助装置も開発中であるが、今回の技術は通常のドナーから提供された腎臓のように、患者の体内に移植できるという利点があると主張している。
今後は、この技術を改良して腎臓としての機能を上げることと、ラットからヒトへの応用を可能にすることが課題である。げっ歯類からヒトへの応用は、医学のどの分野においても常に非常に困難であるためである。
http://www.nature.com/news/lab-grown-kidneys-transplanted-into-rats-1.12791