Nature/Scienceのニュース記事から



第56回(2014年1月21日更新)

ヒトとピロリ菌の起源の不一致により胃がんのリスクが高まる

胃がんはヘリコバクター・ピロリという細菌が主要な原因となっており、全世界のヒトの半分以上が感染している。このピロリ菌は通常は無害であるが、時に胃がんを引き起こす。ピロリ菌はアフリカにおけるヒトの起源にまで遡ってヒトに感染しており、人の移動と共に多様化しつつ広まっていった。しかし、南アメリカなどでは、ヨーロッパからの入植者がこのような共進化の歴史を中断してしまい、一部のヒトは自らとは起源が異なるピロリ菌に感染している。

南米コロンビアの山村であるTuquerresでは胃がんの罹患率が10万人に150人と非常に高い。これに対し、200キロしか離れていない海岸の町Tumacoでは10万人に6人と低い。 Tumacoの住民の多くはアフリカにルーツを持ち、ピロリ菌のルーツもアフリカである。これに対し、Tuquerresの住民は67%がアメリカインディアン、31%がヨーロッパにルーツを持つ。しかし、ピロリ菌のルーツはほとんどがヨーロッパである。ヨーロッパからの入植者が持ち込んだピロリ菌が何らかの理由でもともとあったアメリカインディアンのピロリ菌にとって変わったものと思われる。

自身のルーツはと異なる地域のピロリ菌に感染していると胃がんになりやすいらしいことがわかった。例えば、アフリカにルーツを持つピロリ菌はアフリカにルーツを持つヒトにおいては無害であるが、アメリカインディアンにルーツを持つヒトにおいてはより胃がんを引き起こしやすい。

ピロリ菌の毒性に強く影響するcagAという遺伝子があり、これまでに既に広く研究されているが、ヒトとピロリ菌のルーツの不一致は、cagAよりも胃がんリスクにはるかに強く影響することもわかった。今後、他の地域でもこのような結果が再現されるかどうかを調べることが期待される。

http://www.nature.com/news/human-microbe-mismatch-boosts-risk-of-stomach-cancer-1.14501

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