Nature/Scienceのニュース記事から



第60回(2014年3月8日更新)

Gene editingがHIVに効果を示す

HIVはヒト免疫細胞に感染する際、細胞表面にあるCCR5というタンパク質を認識する。CCR5に変異のある人はHIVに感染しない。CCR5に変異のある人の骨髄幹細胞をHIV患者に移植したところHIVが消失したことが2008年に報告された。しかし、拒絶反応の観点から、この治療法は誰にでも使えるものではなかった。

このほど、HIV患者自身の血液中の細胞で、CCR5の遺伝子をeditすることにより、HIVに対する耐性をあげることに成功した。この成果は、New England Journal of Medicineに発表された。

この研究では、12人のHIV患者から血液を採取し培養後、Zinc Finger Nucleases (ZFNs)で処理したところ、25%の細胞でCCR5遺伝子が不活化された。この血液を元の患者に輸血したところ、全ての患者でT細胞の数が増加し、HIVがこれらT細胞を破壊しにくくなっていることが示された。

半数の患者は、この治療後抗レトロウイルス薬の使用を停止することができた。抗レトロウイルス薬を使用していない間、HIVの数の再上昇は通常より緩やかであった。また、T細胞の数は数週間の間高い値を維持していた。この治療によりgene editingを受けた免疫細胞の増殖が、HIVにより促進されているようである。

この治療による問題点といえば、患者から採取した血液をZFNsで処理する際に使った化学物質のために数日間患者の体からにおいがしたぐらいで、特に問題となるような副作用は見られなかった。HIVの治療法としては、幹細胞の移植などよりも現実的なものだと思われる。

患者のうちの1人は、抗レトロウイルス薬を停止していた12週の間、HIVの数が低いままであった。この患者では、免疫細胞のゲノム上のCCR5遺伝子の1コピーが変異していた。治療後、この患者のT細胞の半数以上はHIVに対して耐性があった。

遺伝子editingの分野は今後成長していくと考えられる。 ZFNs以外にも、transcription activator-like effector nucleases (TALENs) やclustered regularly interspaced palindromic repeats (CRISPRs)などの酵素やDNA編集メカニズムがあり、これらはZFNsに比べてもより正確に遺伝子を標的にする上、単に遺伝子を破壊するのではなくDNAを変換するものであり、鎌状赤血球症などの、単一遺伝子の変異に起因する疾患における利用が既に模索されている。

http://www.nature.com/news/gene-editing-method-tackles-hiv-in-first-clinical-test-1.14813

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.