Nature/Scienceのニュース記事から



第70回(2014年7月12日更新)

STAPの盛衰

「STAPの盛衰 (THE RISE AND FALL OF STAP)」と題して、Nature News(Onlineおよび本誌)におけるSTAP関連のこれまでの記事が、NEWS FEATURES、EDITORIALS、NEWSの3つのカテゴリーに分けてリスト化されている。
http://www.nature.com/news/stap-1.15332

ここでは、NEWS FEATURESとEDITORIALSの記事について概要を紹介する。

■ NEWS FEATURES
「Research Integrity: Cell-induced stress」
・2014年7月3日付
・小保方氏らがこの研究を始めてから今年1月にNature誌に論文を発表するに至った経緯や、その後の不正発覚について概要が述べられている。
・Nature誌がこのようなずさんな論文をアクセプトし発表することをさけられなかったのか振り返っている。
・多くのジャーナルが、論文をアクセプトする際にデータベース上の過去の論文と重複がないかどうかチェックするサービスを利用しているが、今回の小保方氏による盗用元のジャーナルはそのデータベースに入っていなかったために逃されてしまった。
・画像の切り貼りや再利用は、同じ論文の中でなら見つけるのはそれほど困難ではない。実際、マクロやソフトウェアを用いてチェックが行われているが、別の論文からの再利用の場合は発見が困難である上、人的資源も不足している。
・特に新規性の高い研究結果については、独立機関による遺伝子解析が望ましい。羊のドリーにおいても実際に遺伝子解析が行われた。
・Natureは2007年にサル幹細胞株についての論文を掲載した際には遺伝子解析を要求した。そのために発表が数ヶ月遅れた。
・メルボルン大の研究公正アドバイザー「研究のあるところには不正がある。教育やトレーニングをしても不正は止まらない。不正があった時に所属組織がどう対応するかの方が大切で、今回の理研の対応は成功である。データ管理やプレスリリースにおける誇張に問題があったことを理研は認め、対応は迅速で透明性があり、野依氏は理研の全発表論文について同様の問題がないか見直すよう指示した。」
・再現性の問題で最も混乱を招いたのはCharles Vacanti氏である。

■ EDITORIALS
「Agency of change」
・2014年4月30日付。
・過去に日本で起きた捏造事件として、アマチュア考古学者による自作自演や東大のトルコ人教授による100報以上の論文撤回を例に挙げ、日本には研究不正を監視する組織がないのが問題であるとしている。
・この記事に対しては、University College Londonの小野昌弘氏が、ミスリーディングであると反論コメントを寄せている。

■ EDITORIALS
「STAP Retracted」
・2014年7月2日付。
・Nature側として、今回の件を振り返り、ここから何を学べるかについて述べている。内容は以下のようなもの。
・画像の再利用を見抜くのはほぼ不可能。
・一方で切り貼りを見抜くのはもう少し容易。
・多くの原稿のうち一部を抜き出してチェックしているのみである。
・今後はチェックする量を増やす。
・発表前に、内容が共著者の研究室で独立して再現できたことを著者本人らに確認したが、各著者の貢献内容についてまでは確認を取らなかったことは遺憾である。

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